お勧めされていた映画<ベニスに死す>をやっと観ました。
コレラの話ということで勝手にモノクロ映画かと思ってたけどカラーでした。しかも思っていたよりずっと面白かった。
ストーリーは死の迫る音楽家グスタフが静養に訪れたベニスのリゾートで美しい少年ダジオに出逢い、心奪われる中死んでいく、という全編に渡り静かな映画。作品に調和やバランスを追い求める主人公の心の穏やかさが表れているかのようでしたが、それはBGMのマーラーの凪とさざ波のような音楽も同じでした。
ベニスの風景はコレラの影が落ちているので奇麗とは言えませんでしたが、その世間から隔離されたようなリドのホテルのシーンは豪華で、砂浜はとくに良かったです。
自分は妻子もいたような男で「教授」と呼ばれる立場なのに美少年に魅了される…これはもう作中出て来るグスタフがその美的観念の先に得られると考えている「英知、人間的尊厳」とは真逆。静かに葛藤するグスタフに、目が合えば微笑んでくれるタジオ。
タジオに面と向かう際に若々しくありたいと施した欲(化粧)が、結局ひと言も交わす事なくただ見つめるだけで死んで行くグスタフを道化にしていたのがなんともいえない。しかもすぐはがれ落ちるような化粧なのですよ。
機会があったらまた観たい。
写真はベニス・リド島の砂浜…ではなくて鎌倉・由比ケ浜です。