ムルロ工房と20世紀の巨匠たちーパリが愛したリトグラフ
d0165298_23463480.jpg
<ムルロ工房と20世紀の巨匠たちーパリが愛したリトグラフ>を観に<神奈川県立近代美術館 葉山館>へ。かつてパリにあったリトグラフ工房の仕事の展示で、技術協力を受けていた日本のMMGに刷り師としてお務めだったMさんにご案内いただけるチャンスがあり、行ってきました。
ムルロ工房は1930年頃から錚々たる画家たちの展示のポスターを刷ってきた工房です。私はリトのことはよく分からないのですが転写紙というものがあるそうで、ピカソ、マティス、シャガール…などなどみんな転写紙に自筆で描き、それをその名の通り転写して製版していたそうで、描き師が描いたわけではないみたい。そこがまた、画家たちが楽しく盛り上がっていた様子が伝わってきて、みているこちらも楽しい気持ちになってきます。

展示の序盤の黒の溶き墨の美しさ、ずっと見てられるなぁ。ジャン・デュビュッフェの黒とチャレンジ精神もとても素敵。それにマティスやミロの簡潔な作品もまた良く、目からうろこ。そしてまたひとつブラックの傑作を見ることが出来て嬉しい。また雑誌<VERVE>の表紙(と中にも少し)はリトだったらしく、中でもピカソのがデザインは割とふつうなのにすごく素敵に見えて、それはおそらくわずかなインクの盛り上がりのためにクレヨンの線がちゃんとクレヨンらしく見えてるためなのかも…と思って。そう思いつつ、終盤のポスターを見ていたら、どんどん違和感が出て来て魅力が損なわれていっていて…なぜ?と思っていたらMさんに「紙が違うだけでこんなに違うんだよ」と教えていただきました。本当に、さっきまで作品にしか見えなかったポスターが、コート紙のようなものに変わっただけで単なる印刷物に!すごいなぁ。インクもこんなに見え方変わるのね。この時代、もしこの紙が最新の紙だったら、作家としては最先端のおしゃれだったのだろうか。それとも当初からあまり気に入られてなかったのだろうか。文字なんて本当に素っ気なくなった。<良い>ものに見えるのはリトで刷ったからだけじゃなく、支持体も大いに大切ってことなのですね。<VERVE>って何かの展示のときにたびたび目にしてきていると思うのだけど、版画のことを知ってから見るとその良さがよく分かる。知らないというのはつまらない蔑みを生むなぁとふと思った。優劣はないですよ。職業に貴賤無し。ひとの仕事を馬鹿にするべからず。そしてそんなくだらないことに構ってる暇があるくらいなら制作したいのだ。(あ、なんかやさぐれている)

リトで意外だったことは、石版てずっと、昔は大理石しかなかったのかと思っていたけれど、当初からジンク版、アルミ版も使われたらしいです。そして絶えず使う水が、硬水か軟水かとか水質でも違うはず…らしいんだけど、実験であまり変化が見られなかったそう。今なら飲み水で売ってるから試せそう。
それとムルロさんはインディゴのジャケットを仕事着としていつも着ていたらしく、ムルロさんに憧れたMMGの創設者もインディゴのジャケットを仕事着にしていたそうです。版画工房でも藍染め〜。
この頃ずっと忙しかったので久しぶりの美術館&遠出です。嬉しい。海は霞んでより広く、山は迫る青さでした。

[PR]
by orangewords | 2015-06-27 01:09 | アート雑記 | Comments(0)
<< 作家Zakka百貨展 vol.... 続・WS準備 >>